2018.11 隙間読書 ブラックウッド「いにしえの魔術師」夏来健次訳

発行:アトリエサード社


ヴェジンがふと列車から降り立った街は、実はゆかりのある土地だった。かつてその街に住んでいた先祖と同じような出会いを経験、やがて記憶が少しずつよみがえる…今まではそんな不思議な雰囲気を楽しみながら読んでいたが、今回、少し印象が変わった。それは夏木氏の雰囲気をだそうとする訳に気づくところがあったせいかもしれない。

「いにしえの魔術師」は不思議な物語である。同時に、そのなかに光るのは危険にいどみ、なんとか切り抜けていこうとする強さ。そうした冒険の物語も、不思議な物語のなかに入れ子になって面白さをだしているのだなあと思った。

たとえば以下の赤字の箇所に、冒険の物語としての「いにしえの魔術師」を感じた。


「そのために彼らは見張りつつ待ち受けているのか?」とヴェジンは心もふるえる恐れとともに自問したと言う。「ぼくが彼らの仲間に加わるか—それとも拒むかを見きわめるために? その如何は彼らが決めるわけではなくて、結局のところぼくに委ねられているのか?」

 そう覚った瞬間にこそ、この冒険行の奇怪な本質が初めてあらわになり、そして心の底から危機を感じとった。自らのささやかで脆弱な人格の平穏が失われようとしているのを感じた。そして激しいおびえに襲われた。(夏木健二訳)

   “Is this why they wait and watch?” he asked himself with rather a shaking heart, “for the time when I shall join them—or refuse to join them? Does the decision rest with me after all, and not with them?”

    And it was at this point that the sinister character of adventure first really declared itself, and he became genuinely alarmed. The stability of his  rather fluid little personality was at stake, he felt, and something in his heart turned coward.


冒険に挑もうとする精神は、街から屋敷へと舞台をかえ、ブラックウッドの他の作品にもみられるように思う。不思議な体験を語りながらも、強さを失わないで話が展開していく点がブラックウッドの魅力かもしれない。他の作品にあたって確かめたい。

21018.11.24読了

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