TheNYT「ホンジュラスを買いたがる物好きがいるだろうか?」

Who Wants to Buy Honduras? – NYTimes.com.

アダム・デイビッドソン

The New York Times 2012年5月8日

2009年にマニュエル・セラヤを打ち負かしてまもなく、ホンジュラスの新しく選ばれた大統領ポルフィリオ・ロボは側近たちに大きなことを考えるように、信じられないくらい大きなことを考えるように頼んだ。どうしたら元々バナナ共和国であるホンジュラスは、国民のほぼ3分の2が極貧にいる現状から政治的かつ経済的なシステムを改革できるのだろうか。

若い顧問、オクタビオ・ルーベン・サンチェズ・バリエントスには、強固な権力構造をどう抹消すればよいか見当もつかなかった。ホンジュラスの経済は、一握りの富裕一族によって支配されている。アメリカの二つのコングロマリット、ドールとチキチータがホンジュラスの農業輸出を掌握している。絶望的なまでに貧しい農民は、最低生活賃金を増やすことができないでいる。そんなあるとき友人がサンチェズに見せてくれたビデオが、エコノミストのポール・ローマーの講演だった。そのビデオを見て、サンチェズは途方もなく大きなことを思いついた。ホンジュラスを丸ごと最初から始めてはどうだろうかと。

1980年代に、ローマーは経済成長における技術の役割について、エコノミストの考え方を基本的に改めた一連の論文を書いた。そのときから技術にアクセスして豊かになる国もある一方で、なぜ同じように技術にアクセスできるのに貧しいままでいる国が存在しているのかということを、ローマーは研究してきた。教育をうけていない人間に顕著な傾向をローマーは理解するのだが、それによれば貧しい国というのは習わしをおしつけられているし、何よりもそうした習慣のせいで新しい考えが実を結ばない。ローマーの結論とは、もし金持ちになりたいのなら、貧しい国は不当な組織(汚職、少数民族への圧政、官僚主義)を抹消して、ビジネスを支援していく環境をもっとつくりだす必要がある。抹消することが無理だとしても、せめて爪をたてることから始めることができる。

ついにローマーは理論を実践にうつすことを決意した。2009年、ローマーはチャーターシティという考えを詳細に説明した。チャーターシティとは貧しい国の国土につくられる経済ゾーンであるが、豊かな国の法的、政治的システムで治められる。二つの国がチャーターシティに関心をいだいた。(ローマーの話では、マダガスカルの大統領は、この考え方の予備的なバージョンに関心をもったそうだが、すぐにクーデターで地位を追い払われた)。2010年の後半、サンチェズはローマーに出会い、それから二人は即座にロボ大統領を説得して、ホンジュラスを経済の実験地にするよう懇願した。ホンジュラスはただちに憲法改正をして、国とは別に切り離して統治する特別開発地域の創設を許可した。

ローマーによれば、豊かな国になるには巧みに運営された都市が必要となる。なぜなら人々は都市に向かうことになるからだ。都市でありつく仕事は、工場での身の毛のよだつ賃金労働や召使いとしての仕事だろう。それでも多くの家族が都市に移り住むのは、農業で稼ぐよりは多くの収入を得ることができるからだ。1900年では、世界の人口のほぼ90パーセントが田舎暮らしだった。2000年までには、アメリカ、西ヨーロッパ、その他豊かな国の人々のうち4分の3は都市居住者である。アメリカの見積もりでは、今後40年間で、世界の都市人口はほぼ30億になるだろう。その大部分は貧しい国である。

田舎から都市へと、魅力に欠ける引っ越しが続いている。数年前にホンジュラスのビジネスの中心地であるサン・ペドロ・スーラの家族を訪ねたときに、私はその一例を直接この目で見た。ホセ・アビーラとグロリア・ロドリゲスは人生のほとんどをバナナ・プランテーションで1日に25セント稼ぐために働いてきたが、最近になって都市郊外の無法地帯のスラムに引っ越した。子供たちにましな未来がひらけるようにと願ってのことだ。私が二人に会ったときには稼ぎが十分にあり、掘っ建て小屋からコンクリートの家に移っていたほどだ。ホセはコンピュータを売り、ホセの長女のジョニーはスター・ソックマシーンの修理員をしていた。ジョニーは、自分は運に恵まれた娘なのだと言い張った。ジョニーの年頃の女性は売春婦か麻薬の売人として働くしかないからだ。

ローマーのチャーターシティは都市化によるこうした暗い側面を避けようと、以前からある都市のうち成功したものをモデルにしている。アラブ連盟、香港、シンガポールは巧みに計画された都市を建設することに成功した。外国人に盛んに投資を呼びかけることで、数百万人の住まいと雇用を創出している都市もある。ドバイは多くのマイクロシティをつくりだした。例えばその一つは英国、シンガポール、ニュージーランドを参考にして、英国によく似たシステムで統治されている。          

それぞれの都市の試みには、たしかによく知られた欠点もある。でもローマーの言葉によれば、そうした欠点をとりのぞいた上で、核となる考えを複製することが可能である。もしホンジュラスを外国のやり方で導いている者たちが、安心してビジネスができる場所を造りだしたということを投資家に請け合えば、ホンジュラスの新しいチャーターシティは機能しうるとローマーはいう。安心してビジネスができる場所とは、政治家に賄賂をつかって便宜をはかることからも、クデーターの勃発からも、資産が脅かされることのない場所である。もし多国籍企業が新しい工場建設を約束すれば、不動産開発業者もあとに続いてマンションを建設することになるだろう。そうすれば電気、下水、電話、警察への資金も供給されるだろう。

ただローマーも、管理人の役割をどこの国にも引き受けさせることはできなかった(スェーデンと英国は無視をした)。そこでホンジュラスは、民主主義を形成するほど多くの人がチャーターシティに住むようになるまで、管理委員会を任命することにした。その議長になると思われているローマーは、現在のホンジュラスの人口より200万人多い1000万人を収容できる都市の建設を考えている。ローマーのチャーターシティは移民政策に非常に積極的であり、世界中から外国人労働者を引きつけようとする。しかし時には策を弄して移民を思いとどまらせることもある。シンガポールは優れたモデルだとローマーは言う(時として熱心すぎることもあるが)。例えば公衆トイレの水を流さないなどのシンガポールの厳しい罰則は、真夜中に思いだして笑うネタなのかもしれない。しかし、こうした厳しい罰則は、これから移民しようと考える人たちに、もし一生懸命働いて規則に従うならホンジュラスのチャーターシティは素晴らしい場所なのだと伝える。

ローマーのチャーターシティにもルールがたくさんあることだろう。最初に働くことになるのは簡単な、低賃金の工場労働だろうとローマーが考えているにしても、ホンジュラス政府は退職金、健康管理、教育を保証する政策を命じるだろう。ローマーのプランによれば、移住してきた移民は金持ちにはならないだろうが、その子供たちはいつか経済発展の梯子を登りはじめるだろう。

ローマーが話してくれたところによれば、チャーターシティへの反応は両極端だ。「チャーターシティには、植民地主義のにおいがすると言う人もいる」とローマーは説明した。「また、私たちがしていることには少しもインパクトがない、違うことを考えるべきだという人もいる」。もちろんチャーターシティを悪いものにしてしまうやり方は無数にあるが、ローマーには注目に値するところがある。大勢の人々がすでに世界各地の都市に向かっているが、そうした都市は不安定な貧困状態を生み出すかのように開発されている。豊かな国は途上国の政府を改革するために計画されたプロジェクトに1年に数十億を使って、現代的な公共施設を建築したり、労働者に新しい農業技術を教えたりする。だが金を使う割には、少しも成功しない。チャーターシティのスポンサーになるということは、もっと上手くいく援助方法であり、そしてこうした援助ほどは金のかからないものなのである。

貧乏な人の生計についての実験を批判することは簡単である。しかし私はホンジュラス、ハイチ、ヨルダン、インドネシアの混沌としたスラムで過ごすうちに、貧しい人が正式な経済学の外側で、より良い生活の過ごし方について毎日実験をしているということに気がついた。そうした実験は大体においてうまくいっていない。だから私たちは何か新しいことを試みなくてはならない。新しいことをたくさん試みなくてはならないだろう。だが上手くいかないことも、中にはあるということも知っておかなくてはならないのだ。

(LadyDADA訳)

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