2018.01 隙間読書 平井呈一「エイプリル・フール」

このテーマの小説といえば、何故か、どこか不気味なものというイメージがあった。それが見事うれしいことに「エイプリル・フール」で覆った。

(以下、ネタバレの可能性あり)


まず「エイプリル・フール」という題も軽やかで、それでいて何かが起きそうなところがあっていい。

実際の年齢よりも若くなって素敵な男性のもとにあらわれるというドッペルゲンガーも初めて読む気がするが、なんて素敵なドッペルゲンガーを考えたのだろう。

「エイプリル・フール」は、怪奇小説好きの平井呈一がこれまでのドッペルゲンガー小説に飽き足らず、不気味ではない、どこか可憐で心に残る小説を書こうとしたのではないだろうか?


青年が語るドッペルゲンガーとの出会いも印象的である。

見ると、街灯の青い灯が黒い瞳に濡れたように映って、木陰の闇のなかに、ブラウスの胸の赤とそれだけがポッカリと浮き上がったような、陶器のように色の白い美しい顔の人でした。


ただ、このドッペルゲンガーの女のふだんの生活での言葉は、私としてはあまり好きになれない。平井呈一は、ふつうに生活している女がドッペルゲンガーとして現れる面白さを書こうとしたのかもしれない。でも、そういう女はふだんの生活でもはかなく、できれば関東の言葉では喋ってほしくないという偏見にちかい思い込みが私にはある。下のような言葉は、正直、本当に嫌だなと思ってしまった。

「あははは……いやだわ、私。……どうしたというんでしょう。……そうだったの?-エイプリル・フール……?」


もっと平井呈一の怪奇小説を読んでみたかった……なぜ書かなかったのだろうか?

永井荷風のせいで書くことが出来なくなったせいなのか、それとも歳を重ねるにつれて永井荷風を超えることのできない自分を悟ったのか……と考えつつ頁を閉じる。

2019.01.02読了


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