2019.03 隙間読書 篠たまき「人喰観音」

人喰観音(早川書房)

作者の前作「やみ窓」を読んでから、次作「人喰観音」が気になりつつも怖い話、気持ちの悪い話が苦手な私……このタイトルに迷っていたが一大決心して読んでみたら、気持ちの悪いところはなく安堵。

「人喰観音」は永遠に生きる、穏やかで美しい生きもの達の切ない物語だった。その生きものに憑かれる人間は、みんな此の世でどこか傷をかかえているが、憑かれることで傷が癒されていく。

でも殆どのひとは「永遠に生きるもの」を怖れる。親しくしているように見えた者たちも、住み込みの婆や、それから琴乃のように後から嫌悪の念を吐露したりする者たちも。その疎ましく思う気持ちに「なぜひとは異界を嫌悪するのだろうか?」と切ない気もしてくる。

 この作者らしい不思議な小道具の数々も心に残る。心をよみとられるのを防ぐ丁子の小袋、紅い色をした紫陽花(このエピソードが表紙になっているのですね、なぜ、こんなに赤いのかは読んでの楽しみ)、蚕の糞を発酵させてこしらえていた黒色火薬、永遠に生きるものを殺してしまう潮乾湯という煎じ薬。

言葉も不思議な小道具に。たとえば章題を見ても、「一章 隠居屋敷、二章 飴色聖母、三章 白濁病棟、四章 藍色御殿」と作者がつむぐ言葉だけで読む者の心はときめいてしまう。

「永遠に生きるもの」の切なくも美しい物語、このあとも続きが読めたらいいのに……と思いつつ頁をとじる。

(2018.03.27読了)


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