2019.04 隙間読書 泉鏡花「義血侠血」

明治27年11月、鏡花21歳のときの作品。まだ世間から認めてもらえず、金銭的にきっと苦しい思いをしていたにちがいない鏡花の当時の思いが伝わってくるような作品である。

士族の生まれながら金がないため御者に身をおとし、法律の勉強ができずに苦しんでいる村越欣弥。まだ若い鏡花は、自分が想像できる世界から登場人物を生み出そうとしたのだろうか?

そんな村越欣弥の苦境を救おうと金銭的援助を申し出た水島友(滝の白糸)は、「こんな女性がいてくれたらいいのになあ」という若い鏡花の憧れを描いているようにも思えてくる。

水島友は村瀬欣也を助けようと思う余り罪を犯してしまう。その罪について話している者たちの会話に、鏡花は法律への不信をひそませる。相手は女だから可哀想に、弁護士も依頼人を諭すべきだという男にたいして「そんな弁護士を誰が頼むものか」と鏡花は相手の男に言わせている。

「義血侠血」自体が、義憤にかられた水島友の犯罪を冷酷に裁く法を描いている。法を学んでも、恩をかえすことのできない村越欣弥の苦悩も「ついに幽明を隔てて、永く恩人と相見るべからざるを憂いて」と語る。

こんなに若くして、鏡花が現実を裁く法の限界を思うようになったのはなぜだろうか? でも現実を法で裁くことに限界を感じていたからこそ、やがて幻想にみちた作品がうまれたのだろうかとも思いつつ頁をとじる。(2019.04.09読了)


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