2019.05 隙間読書 三島由紀夫「女方」

昭和32年10月「世界」発表、三島32歳のとき。

主人公の佐野川万菊は、真女方の六世中村歌右衛門がモデルだそうである。万菊にあこがれて作者部屋入りいした狂言作家「増山」が、新劇の演出家「川崎」に恋する万菊の心を見つめた作品。

三島が語る過剰なまでの、歌舞伎作品の説明も楽しい。なかでも「妹背山婦女庭訓」の「金殿」の箇所は、お三輪がありありと見えてくるような語りで何度も、何度も読み返してしまった。

「妹背山」の御殿で、万菊の扮するお三輪が、恋人の求馬を橘姫に奪はれ、官女たちにさんざんなぶられた末、嫉妬と怒りに狂はんばかりになつて花道にかかる。と、舞台の奥で、「三国一の婿取り澄ました。シャン〱〱。お目出度たう存じまする」といふ官女たちの声がする。床の浄瑠璃が「お三輪はきつと見返りてと力強く語る。「あれを聞いては」とお三輪が見返る。いよいよお三輪が人格を一変して、いはゆる疑着の相をあらはす件りである。(三島由紀夫「女方」より)

三島由紀夫が演劇作品を語るとき、その場面の命をしっかり見つめていることに驚き、もっと三島が語る演劇評を読んでみたいと思いつつ頁をとじる。

(2109.05.10読了)


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