再訳 サキ『耐えがたきバシントン』№26

監督室で、コーモスは余念なく、椅子を一脚、中央の正確な位置に置いていた。

 「すべて手筈は整った」彼はいった。

 ルートリィは置き時計に目をはしらせたが、その様子ときたら、円形競技場にいるローマの上品な人さながらであったーーローマ人が物憂げに待ちうけているのは、察するにクリスチャンが待機している虎に引き合わされる場面である。

 「あと二分で到着するはずだ」彼は言った。

 「よもや遅れることはあるまい」コーマスは言った。

 コーマスは、入学当初、罵られたり、酷評されたりの経験をたくさん積んできた。だからこそ、この瞬間も彼の運命の犠牲者が、ドアのむこうでおそらく惨めにうろつきながら感じている恐怖を、最後の一滴まで堪能することができた。つまり、それが物事の楽しみの一部分である。だから、どこを探すべきか知っていれば、ほとんどの物事には楽しい側面というものがあるわけだ。

In the prefects’ room, Comus busied himself with the exact position of a chair planted out in the middle of the floor.

“I think everything’s ready,” he said.

Rutley glanced at the clock with the air of a Roman elegant in the Circus, languidly awaiting the introduction of an expected Christian to an expectant tiger.

“The kid is due in two minutes,” he said.

“He’d jolly well better not be late,” said Comus.

Comus had gone through the mill of many scorching castigations in his earlier school days, and was able to appreciate to the last ounce the panic that must be now possessing his foredoomed victim, probably at this moment hovering miserably outside the door.  After all, that was part of the fun of the thing, and most things have their amusing side if one knows where to look for it.


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