再訳 サキ『耐えがたきバシントン』№27

 扉をたたく音がした。そして「なかに入れ」という心からの親しみをこめた命令にしたがって、ランスローが入ってきた。

 「ここに来たのは鞭でうたれるためなんです」息を切らしながら、名前をつげた。「僕の名前はチェトロフです」

 「その名前もずいぶんひどい」コーモスはいった。「だが、もっと問題にしたほうがいいことがある。あきらかに、おまえは何か隠し立てをしている」

 「一回、サッカーの練習に参加しそこないました」ランスローはいった。

 「六打ち」コーマスはそっけなく言うと、鞭をとった。

「掲示板の通知を見ていなかったんです」絶望にしずみながら、ランスローは思い切って言った。

 「言い訳をきくたびにうれしくなるよ。だから二打ちふやすとしよう。八打ちになる。さっさとやるぞ」

 それからコーモスは椅子を身ぶりで示したーその椅子は不気味な孤独さをひめ、部屋の真ん中に置かれていた。そのときほど家具が嫌悪の念をもよおされるものとして、ランスローの目にはいってきたことはなかった。コーモスも、部屋の中央に突き刺すように置かれた椅子が、自分の目にも、この世に生産されたもののなかで最もおぞましく見えた時のことを思い出したのかもしれない。

There was a knock at the door, and Lancelot entered in response to a hearty friendly summons to “come in.”

“I’ve come to be caned,” he said breathlessly; adding by way of identification, “my name’s Chetrof.”

“That’s quite bad enough in itself,” said Comus, “but there is probably worse to follow.  You are evidently keeping something back from us.”

“I missed a footer practice,” said Lancelot

“Six,” said Comus briefly, picking up his cane.

“I didn’t see the notice on the board,” hazarded Lancelot as a forlorn hope.

“We are always pleased to listen to excuses, and our charge is two extra cuts.  That will be eight. Get over.”

And Comus indicated the chair that stood in sinister isolation in the middle of the room.  Never had an article of furniture seemed more hateful in Lancelot’s eyes. Comus could well remember the time when a chair stuck in the middle of a room had seemed to him the most horrible of manufactured things.


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