再訳 サキ『耐えがたきバシントン』№57

「むかいの方に関心があると見える」コートニー・ヨールがいった。

「以前、お会いしたことがあるような」フランチェスカはいった。「お顔に覚えがありますから」

「ルーヴルの狭い回廊でじゃないですか? ダ・ヴィンチの絵が飾られている回廊でね」ヨールはいった。

「たしかに」フランチェスカは相槌をうちながら、その思いは乱れ、漠然とした印象をとらえたことに満足を覚える一方で、ヨールが自分の救世主になったことに困惑もしていた。いっそう困惑が強まったのは、レディ・キャロラインのいるテーブルの方から、ヘンリー・グリーチの声がひどく響いてきたときのことだった。

“You seem interested in your vis-à-vis,” said Courtenay Youghal.

“I almost think I’ve seen her before,” said Francesca; “her face seems familiar to me.”

“The narrow gallery at the Louvre; attributed to Leonardo da Vinci,” said Youghal.

“Of course,” said Francesca, her feelings divided between satisfaction at capturing an elusive impression and annoyance that Youghal should have been her helper.  A stronger tinge of annoyance possessed her when she heard the voice of Henry Greech raised in painful prominence at Lady Caroline’s end of the table.

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