再訳 サキ『耐えがたきバシントン』№97

ふたりの求婚者といっしょにいて、しかも少なくともひとりは際立って若々しく、魅力があるように思え、しかも彼女の機嫌をとろうとしているのだから、エレーヌが、この世界に満足したとしても、とりわけ自分自身に満足したとしても筋がとおることであっただろう。でも、さい先のよい瞬間においても、幸せに支配されていることはなかった。彼女の顔には重々しい静けさがただよい、耐えがたい狼狽をいつものように覆いかくしていた。善意あふれる家庭教師がつづき、彼女の一門について道徳的考察が十分にされてきたため、富とは大きな責任であるという理論上の事実が彼女の心には刻まれていた。自分の責任というものを意識しているせいで、常に彼女が思いをめぐらすのは、自分に「執事」を去らせる適性があるかどうかではなくて、接する人々の動機やら利益についてだった。

With two suitors, one of whom at least she found markedly attractive, courting her at the same moment, Elaine should have had reasonable cause for being on good terms with the world, and with herself in particular.  Happiness was not, however, at this auspicious moment, her dominant mood. The grave calm of her face masked as usual a certain degree of grave perturbation. A succession of well-meaning governesses and a plentiful supply of moralising aunts on both sides of her family, had impressed on her young mind the theoretical fact that wealth is a great responsibility.  The consciousness of her responsibility set her continually wondering, not as to her own fitness to discharge her “stewardship,” but as to the motives and merits of people with whom she came in contact.  


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