再訳 サキ『耐えがたきバシントン』№98

自分になら買えるものが世界には沢山あると知っているせいで、買うだけの価値のあるものがどれだけあるのか彼女は思いをめぐらすようになった。だんだんと、彼女は自分の心をある種の控訴院として見なすようになり、内々の開廷期間をまえにして、動機や行動について調べたり、判断をくだしたりしていた。とりわけ一般の人々の動機が対象となることが多かった。学校の教室で学んでいた頃、彼女が真面目に判断をくだしていたのは、チャールズやクロムウェル、モンク、ワレンシュタイン、そしてサボナローラを導きもすれば、誤った方向にも導いた動機についてであった。そして今、同じようにして夢中になって調べているのは、外務省で秘書官をしている青年の、政治面での誠意であって、弁舌たくみでありながら、できれば忠実な心をもつ侍女の誠実さがあるかどうか、やさしく甘やかす仲間たちが無私無欲かということだった。

The knowledge that there was so much in the world that she could buy, invited speculation as to how much there was that was worth buying.  Gradually she had come to regard her mind as a sort of appeal court before whose secret sittings were examined and judged the motives and actions, the motives especially, of the world in general.  In her schoolroom days she had sat in conscientious judgment on the motives that guided or misguided Charles and Cromwell and Monck, Wallenstein and Savonarola. In her present stage she was equally occupied in examining the political sincerity of the Secretary for Foreign Affairs, the good-faith of a honey-tongued but possibly loyal-hearted waiting-maid, and the disinterestedness of a whole circle of indulgent and flattering acquaintances.  

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