サキ「耐えがたきバシントン」 Ⅹ章 114回

かすかな笑みをあやふやにうかべたまま、会釈できる範囲にいる人々すべてに一瞥をなげかけ、セレーヌ妃殿下は彼女らしい特徴のある様子で退出をした。その様子は、レディ・キャロラインの表現を借りれば、トーストからスクランブルエッグが滑り落ちていく様子をいつも思い出させるものだった。玄関のところで、彼女は到着したばかりの青年と一言か二言、言葉をかわした。お茶の消費にせっせとはげむ未亡人軍団にかこまれた隅の方からでも、コーマスには、到着した青年がコートニー・ヨールだとわかり、苦労しながらも、その方角へと進もうとした。ヨールはそのとき、コーマスが熱望するような社交生活の持ち主ではなかった。だが少なくとも、ブリッジの試合をする機会を提供してくれる可能性はあった。それこそが、この瞬間においては他をしのぐ欲望であった。その若い政治家はすでに友人知人にとりかこまれ、祝福の喝采をうけていた。おそらく最近、外務省の討論会でおこなった演説のせいだろうとコーマスは結論をだした。だが、ヨールがみずから告げている出来事は、祝福と関連があるようにみえた。はげしい混乱が政府に生じているのだろうかとコーマスは考えた。それから、そばに近寄ったときに偶然聞こえてきたのは、ふたつの名前を結びつけた言葉であり、おかげで彼はその知らせの内容を知ったのであった。

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