アーサー・モリスン「ジェイゴウの子ども」34章164回

青ざめた顔をした、黒衣の男が椅子のわきを歩いてきて、背の高い幽霊のように、裁判官の横に立ち、視線をあげ、こぶしを握りしめた。裁判官は、横の席から黒いものをとりあげ、それを自分の頭にのせた。柔らかな角帽のようなもので、ジョシュは興味ぶかそうに見つめた。角帽の片側には、大きな絹の房飾りがついていて、鬘や眼鏡、赤の長衣と共に、裁判官をおそろしいほど上品にみせていた。今ほど、ジョシュの頭脳が冴えていたことはなかった。

「被告は、法にてらしてみた結果、死の判決から免れることができませんが、何か言いたいことがありますか?」

「いえ、ないです。やりました。ひどいやつだからやりました」

 書記官は深く腰かけた。裁判官は話した。

「ジョシュア・ペロー、被告人が有罪だと証明した証拠は、疑う余地のないものである。合理的な精神をもつ者であれば、被告人の罪が何であろうとも、故意に殺人を犯し、有罪であると判断することは明らかである。被告人のおそろしい罪状については、あらためて述べる必要もない。その罪は、このうえなく残酷なものであり、衝撃的なものである。被告人がその家に侵入したのは、故意であり、周到な用意をしていた。被告人は、ここではなく、さらなる上級裁判所で、そこの主の死について申し開きをしなくてはならない。侵入した理由が強盗しようと考えたせいではなく、復讐しようと考えたせいだということは問題ではない。そうした事情を考慮することが、私の務めなのではない。しかも被告人は、冷酷かつ残忍な証拠すべてが示しているように、あの不幸な男を最後の場所へと追いやった。やがて被告人も、その場所へと行き、自らを償わなくてはいけない。被害者である哀れな男の、過ちにみちた人生について、私は何も言うことはできない。また被告人が考えるべきものでもない。被告人に真摯に求めたいことは、この地上に残された短い時間を悔悛についやし、全能の神との和解についやすことである。私に定められた義務により、これから判決の文を読み上げるが、この判決をくだしたのは私ではない。この国の法が、被告人のおかした罪にたいして判決を課すのである。判決文を読み上げる。被告人は、また先ほどまでの場所へと戻り、そこから死刑執行の場所へと連行される。そして、そこで首からつるされて死ぬものとする。神の慈悲が被告人の魂にありますように」

「アーメン」それは背の高い、黒衣の男が発した言葉だった。

 こうして、すべてが終了した。看守が、彼の腕をとった。かまわなかった。だが彼はすばやく、硝子の仕切りのむこうにいる家族に視線をはしらせた。ハンナは倒れかけていたが、そこに見える彼女は生気を失い、ふらつく塊と化していた。そしてディッキーは、両腕で彼女をささえていた。ディッキーの顔は沈み、青ざめ、両頬が痙攣していた。ジョシュは仕切りのほうに踏み出したが、急いで連れて行かれた。

 

The Clerk of Arraigns sank into his place, and the judge spoke.

‘Joshua Perrott, you have been convicted, on evidence that can leave no doubt whatever of your guilt in the mind of any rational person, of the horrible crime of wilful murder. The circumstances of your awful offence there is no need to recapitulate, but they were of the most brutal and shocking character. You deliberately, and with preparation, broke into the house of the man whose death you have shortly to answer for in a higher court than this: whether you broke in with a design of robbery as well as of revenge by murder I know not, nor is it my duty to consider: but you there, with every circumstance of callous ferocity, sent the wretched man to that last account which you must shortly render for yourself. Of the ill-spent life of that miserable man, your victim, it is not for me to speak, nor for you to think. And I do most earnestly beseech you to use the short time yet remaining to you on this earth in true repentance, and in making your peace with Almighty God. It is my duty to pronounce sentence of that punishment which not I, but the law of this country, imposes for the crime which you have committed. The sentence of the Court is: that you be taken to the place whence you came, and thence to a place of execution: and that you be there Hanged by the Neck till you be Dead: and may the Lord have Mercy on your Soul!’

‘Amen!’ It was from the tall black figure.

Well, well, that was over. The gaoler touched his arm. Right. But first he took a quick glance through the glass partition. Hannah was falling over, or something,—a mere rusty swaying bundle,—and Dicky was holding her up with both arms. Dicky’s face was damp and grey, and twitching lines were in his cheeks. Josh took a step toward the partition, but they hurried him away.

 

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