アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」8章79回

いつも健康的で、肌もきれいなため、彼女は器量のいい女にはいるといってもよかった。いきいきと背筋をのばして、彼女は丘を登り続けたが、その様子は終始活気にみちあふれ、障害物を乗りこえて楽しんでいるときのようだった。その目は前方を見つめていた。ベッシーも、荷車の幌の下から来た道をふりかえっていたのだが、娘の見つめる先に広がる眺めは気にかけなかった。ただ、これから火蓋がきられる闘いのことで頭がいっぱいで、少し怖じ気づきながらも、勇ましい思いにかられた。いっぽうでクリスマスにセイヨウヒイラギで店を飾るという思いつきにしても、なかなか商売上手だった。この地でなら、ジョニーが商売用のセイヨウヒイラギを見つけることができるが、ロンドンで手に入れようとしたらお金がかかるからだ。

 

 荷車が丘の頂きに到着した。それでもナン・メイは、背後においてきた景色を見ようとはしなかった。ベッシーがじゅうぶん休んだ世界が、まだ残っていた。そこでにはラフトンの町が緑の丘にひろがっていた。薄暗い木々が点在する様子は、箱いっぱいの玩具がばらまかれているかのようだった。木々のむこうには、悲しい色合いをおびた森が地平線にひろがっていた。その左に、近くの松の枝のあいまから見えているものは、ハイ・ビーチの教会の尖塔で、ビロードを思わせる縁から突き出していた。右手の丘には、四角い形をした教会の塔がそびえ、そのかたわらにはおじいちゃんの墓があった。ステープルズの丘がはっきりと弧をえがき、森のなかに見えなくなるところに、陰鬱な木々が幾本かそびえ、彼らに別れを告げていた。見えはしないけれど、そのむこうには空っぽの小屋が畑のなかに建っていて、湿気をふくんで徐々に朽ち始めていた。やがて両脇の木々に視界がさえぎられた。そして荷車は平らなところでとまって、ナン・メイを乗せた。

 

Always a healthy, clear-skinned, almost a handsome woman, active and shapely, she walked the hill with something of steadfast fierceness, as one joying in trampling an obstacle: her eyes fixed before her, and taking no heed of the view that opened to Bessy’s gaze as she looked back from under the tilt of the cart; but busy with thought of the fight she was beginning, a little fearful, but by so much the gamer. Meanwhile, it was a good piece of business to decorate a shop with holly at Christmas, and here Johnny found holly ready for the work; it would cost money in London.

The cart crowned the hill-top, and still Nan May regarded not the show that lay behind, whereof Bessy took her fill for the moments still left. There Loughton tumbled about its green hills, beset with dusky trees, like a spilt boxful of toys, with the sad-coloured forest making the horizon line behind it. Away to the left, seen between the boughs of the near pines, High Beach steeple lifted from the velvety edge, and as far to the right, on its own hill, rose the square church tower that stood by gran’dad’s grave. And where the bold curve of Staples Hill lost itself among the woods, some tall brown trees uprose above the rest and gave good-bye. For invisible beyond them lay the empty cottage in its patch of garden, grown dank and waste. Then roadside trees shut all out, and the cart stopped on the level to take up Nan May.

さりはま の紹介

何かあればsarihama★hotmail.co.jpまでご連絡ください。★は@に変えてください。更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: アーサー・モリスン, ロンドン・タウンへ パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.