アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」21章190回

「ごらんのとおりのありさまだ」バトスンは言ったが、その顔はアイザックおじさんと同じくらい赤紫になっていた。「こちらにいるお前のおじさんのことで話がある、ミセス・バトスン。こいつが何者であろうとも、ここに物乞いに来ることはもうない。もうご馳走になりにくることはない。この俺がそう言ったのだから、もう来ることはない。わかったな? もし言いたいのなら、さようならを言っておいた方がいいぞ。すぐに彼は出ていくからな、さあ」

「ああ、わかった」アイザックおじさんはそう答えると、姪のほうに話しかけながら、目はバトスンをねめつけた。「出ていこう、ミセス・バトスン。そのほうがお前にはいいんだろう? おまえのために、すべてをやってきたのに。感謝されてもいいところなのに」

「なんてことを言うの、おじさん」気も狂わんばかりの様子で、ナンはいった。「なぜなの? 何があったというの? おじさんがいつもよくしてくれたことは分かっているわ。ヘンリー! これはいったいどういうことなの?」

「この吸血野郎にとどめをさしたまでだ。ただそれだけの話さ」

「吸血野郎だと!」アイザックおじさんがさけんだ。「たしかに、その方面をお前は得意としているからな。自分の仕事のこともろくに知らないなんて、哀れな野郎だ。知っていれば、自分で生活費を稼げるのに。ひとにたかって、馬鹿な女に養ってもらって、ぐうたらしているなんて」

「さあ、出て行け、出て行け」バトスンは怒りにもえながら、命令した。

「いけないわ、おじさん。ちょっと待って」哀れにもナンは懇願した。「ヘンリー、だめよ。喧嘩はしないで」

「出ていけ!」

 

“This is what it is,” said Butson, now near as purple as Uncle Isaac. “This ‘ere uncle o’ yours, Mrs. Butson, or whatever ‘e is, ain’t comin’ ‘ere cadgin’ ‘is grub any more; not so long as I got a say in it ‘e ain’t. See? So now you better say good-bye to ‘im if ye want to, ‘cos ‘e’s goin’, quick.”

“O yus,” said Uncle Isaac, speaking to his niece, but glaring at Butson, “I’m goin’, Mrs. Butson. An’ much better may you be for it. After what I done for you an’ all. Sort o’ gratitood I might ‘a’ expected!”

“O uncle!” exclaimed the distracted Nan. “Why, whatever’s the matter? I know you’ve always been very good. Henry! What’s it all about?”

“About puttin’ a end to this ‘ere bloodsuckin’, that’s all!”

“Bloodsuckin’!” exclaimed Uncle Isaac. “Yus, you know somethin’ about that! Pity ye don’t know yer trade ‘alf as well! Then p’raps you’d earn yer livin’, ‘stead o’ spongin’ on people an’ deloodin’ a fool of a woman to keep ye lazy!”

“Go on! go on!” commanded Butson, with increasing wrath.

“No, uncle, stop a minute,” entreated poor Nan. “Don’t, Henry, don’t let’s quarrel!”

“Go on!”

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