チェスタトン「マンアライヴ」一部一章第22回

イングルウッドが持ち合わせている丁寧さは生まれついてのものながら、やや困惑する場面もあった。彼の人生は、助けの手をさしのべようとしているのに、その手がさえぎられることが度々だった。緑の服に身をつつんだ大男が、明るい、緑色のバッタのように壁を跳び越えてくるという仰天するような出来事に遭遇しても、自分のことよりも他人を優先するという、彼のつまらない習慣は麻痺することなく、とばされた帽子にも同様に立ち向かった。彼が前に踏み出して、緑の紳士の被り物を取り戻そうとしたそのとき、雄牛のような唸り声がしたせいで、彼の顔はこわばった。

「スポーツマンらしくないぞ!」大男は吠えた。「フェアプレーでいけ、フェアプレーで!」それから自分の帽子のあとにつづいて、彼は素早く、でも用心しながら来たが、その目は強烈な光をはなっていた。

 

Inglewood had a politeness instinctive and yet awkward. His life was full of arrested half gestures of assistance. And even this prodigy of a big man in green, leaping the wall like a bright green grasshopper, did not paralyze that small altruism of his habits in such a matter as a lost hat. He was stepping forward to recover the green gentleman’s head-gear, when he was struck rigid with a roar like a bull’s.

“Unsportsmanlike!” bellowed the big man. “Give it fair play, give it fair play!” And he came after his own hat quickly but cautiously, with burning eyes.

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