チェスタトン「マンアライヴ」一部四章第95回

「軽率な結婚だと!」マイケルは笑った。「いったいこの世のどこに、用心深い結婚なんてものがあるのか? 用心深い自殺を探すようなものだよ。君と僕はもう長い間、なんとなくだけど一緒に過ごしてきたのだから、昨夜会ったばかりのスミスとメアリー・グレーと比べたら安心できるというものじゃないか? それとも君は結婚するまで、旦那とは会わないつもりなのかい?不幸になるだと! もちろん、君は不幸になるよ。不幸にならないとしたら、どうかしている。君を生んだお母さんも不幸になったのだから。失望するだと? もちろん、僕たちは失望するだろうよ。僕は死ぬまで、今のような善人でいるつもりはないから。トランペットが鳴り響く塔のような状態を保てるわけがない」

「あなたはよく分かっているのね」ロザムンドは、したたかな顔に純な表情をうかべて言った。「でも、ほんとうに私と結婚したいのかしら?」

「君も疑り深いね。ほかに何を望んでいると思うんだい?」アイルランド人は答えた。「この世の中で、多忙な男が他に何を望むというんだ、君との結婚を別にすれば。結婚するかわりに何をすればいい? 眠っていろとでもいうのか? それは自由というものではないんだよ、ロザムンド。アイルランドの尼さんのように神様と結婚するのでなければ、君は誰かと結婚しないといけない。その相手とは僕だ。あるいは唯一残された第三の選択肢とは、自分と結婚することだ。君が君自身と結婚するんだ。そう君自身、君自身とだよ。君自身というのはたった一人の仲間だけれど、その相手は満足することはないし、けっして満足のいく相手でもない」

「マイケル」ロザムンドはとても穏やかな声で言った。「もし、あなたがおしゃべりをやめたら、あなたとの結婚を考えるけど」

「たしかに話しをするときではないね」マイケル・ムーンは大声をだした。「今は歌うのが一番いい。君のマンドリンはどこにいった?」

「取りに行ってきて」ロザムンドはてきぱきと、でも辛辣な、威張った口調で言った。

 

“Imprudent marriages!” roared Michael. “And pray where in earth or heaven are there any prudent marriages? Might as well talk about prudent suicides. You and I have dawdled round each other long enough, and are we any safer than Smith and Mary Gray, who met last night? You never know a husband till you marry him. Unhappy! of course you’ll be unhappy. Who the devil are you that you shouldn’t be unhappy, like the mother that bore you? Disappointed! of course we’ll be disappointed. I, for one, don’t expect till I die to be so good a man as I am at this minute— a tower with all the trumpets shouting.”

“You see all this,” said Rosamund, with a grand sincerity in her solid face, “and do you really want to marry me?”

“My darling, what else is there to do?” reasoned the Irishman. “What other occupation is there for an active man on this earth, except to marry you? What’s the alternative to marriage, barring sleep? It’s not liberty, Rosamund. Unless you marry God, as our nuns do in Ireland, you must marry Man—that is Me. The only third thing is to marry yourself— yourself, yourself, yourself—the only companion that is never satisfied— and never satisfactory.”

“Michael,” said Miss Hunt, in a very soft voice, “if you won’t talk so much,
I’ll marry you.”

“It’s no time for talking,” cried Michael Moon; “singing is the only thing.
Can’t you find that mandoline of yours, Rosamund?”

“Go and fetch it for me,” said Rosamund, with crisp and sharp authority.

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