再訳 サキ『耐えがたきバシントン』№61

「昨日、あなたの本をコーマスが貸してくれただけのことですよ」ヨールは言った。形のいい顎をつきだし、からかい、楽しむような目で彼女に視線をやった。彼女がコーマスとの親しい付き合いを嫌がっていることは、彼にも分かっていたが、その青年におよぼす影響をひそかに誇らしく思ってもいた。たとえ、それが浅はかで、効果のないものだと分かっても。彼にすれば、親しい交わりは望むところではなかったから、指導者の役目を真面目に引き受けた瞬間、おそらく、その親しみは粉々になってしまうだろう。コーマスの母親がふたりの友情をあきらかに認めていないという事実に、若い政治家の目には、親しさとともに好奇心がひかった。

“Only because Comus lent me your copy yesterday,” said Youghal.  He threw back his handsome head and gave her a sidelong glance of quizzical amusement.  He knew that she hated his intimacy with Comus, and he was secretly rather proud of his influence over the boy, shallow and negative though he knew it to be.  It had been, on his part, an unsought intimacy, and it would probably fall to pieces the moment he tried seriously to take up the rôle of mentor.  The fact that Comus’s mother openly disapproved of the friendship gave it perhaps its chief interest in the young politician’s eyes.


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