丸山健二『言の葉便り 花便り 北アルプス山麓から』より「美の基準はどこに」を読む
美の基準というものを考える言葉にも、ずっと大町で花を見つめてきた丸山先生らしい視線がある。
たとえばサルスベリを疎ましく思う「夏中ずっと衰退の気配すら見せないために、鑑賞者の目は次第に濁りを帯びてゆき」という言葉。
そんな言葉や以下引用文を読むと、美は一瞬……という気もすれば、丸山先生が一年中鮮やかな花が咲き続ける南国に住んでいたら、小説は書いていなかったのでは……と信濃大町の厳しい自然に感謝したくなる。
結局のところ美は錯覚の産物にすぎません。時と場所、そして出会いのきっかけと回数などによって、美の尺度は人それぞれなのです。また、同一人物であっても、その時の気分によって微妙に異なってきます。
(丸山健二『言の葉便り 花便り 北アルプス山麓から』34ページ)