丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より十一月六日「私はマツタケだ」を読む
十一月六日は「私はマツタケだ」と「マツタケ」が語る。
ちっぽけなマツタケがとらえる世一の姿の不可思議な複雑さに、人間の神秘を感じ、色々あれどそう捨てたものではない……という気持ちになってくる。
それにしても七割、二割、一割……という表現とか、どうしたら思いつくのだろうか。
というか
私のほうがその少年を発見したと言うべきであり、
ヒスイなんぞよりはるかに珍しく
もしかすると希元素よりずっと貴重な存在かもしれぬ
七割の青
二割の白
そして一割の影をもって
不自由な身を固めている病児との出会いは
奇跡と呼べる遭遇だった。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』46ページ)
事の本質を喝破しそうな眼差しを注いできて
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』47ページ)
本心の在り処がまったくわからぬその少年は
沈黙と凝視によって
なんとも奇妙な威圧感をつづけ、
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』48ページ)
存在の価値というものがいかに曖昧であるかという意味の
いかにも残忍な嘲笑を浴びせかけるのだった。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』49ページ)