丸山健二『千日の瑠璃 終結8』より九月十七日「私は通り雨だ」を読む
大切な友人でもあるオオルリを飼っていることを非難され、無理やり籠から放たれてしまい悲嘆にくれる身体の不自由な少年・世一。
その悲しみを慰めようとする通り雨に、自然界の優しさを思う。
世一の悲しみ、怒り、孤独に、人の世の難しさを思う。
わずか4ページにそんな宇宙が凝縮され、読む間に様々な感情が駆け抜けてゆく。
最初の「空っぽの鳥籠」が世一の心にも思え、冒頭から悲しくなる。
私は通り雨だ、
空っぽの鳥籠を手に提げたまま
当てもなくさまよいつづける少年世一をずぶ濡れにして
なんとか諦めさせようと懸命に努める
自分で言うのもなんだが
情趣にあふれた通り雨だ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結8』66ページ)
やがて
腹の底から
魂の底から振り絞るようにして出した凄まじい声を
獣染みた怒りの咆哮を
全天に向けて叩きつけ、
喉が痛くなるまで叫びつづけて
あふるる涙を私のなかで洗い流した後、
待ってくれる者がいない自宅へと
落胆をなおも強めて
とぼとぼ帰って行く。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結8』69ページ)