さりはま書房徒然日誌2026年3月8日(日)

丸山健二『千日の瑠璃 終結8』より九月十七日「私は通り雨だ」を読む

大切な友人でもあるオオルリを飼っていることを非難され、無理やり籠から放たれてしまい悲嘆にくれる身体の不自由な少年・世一。

その悲しみを慰めようとする通り雨に、自然界の優しさを思う。

世一の悲しみ、怒り、孤独に、人の世の難しさを思う。

わずか4ページにそんな宇宙が凝縮され、読む間に様々な感情が駆け抜けてゆく。

最初の「空っぽの鳥籠」が世一の心にも思え、冒頭から悲しくなる。

私は通り雨だ、

空っぽの鳥籠を手に提げたまま
   当てもなくさまよいつづける少年世一をずぶ濡れにして
      なんとか諦めさせようと懸命に努める
         自分で言うのもなんだが
            情趣にあふれた通り雨だ。

(丸山健二『千日の瑠璃 終結8』66ページ)

やがて
   腹の底から
      魂の底から振り絞るようにして出した凄まじい声を
         獣染みた怒りの咆哮を
            全天に向けて叩きつけ、

喉が痛くなるまで叫びつづけて
   あふるる涙を私のなかで洗い流した後、

待ってくれる者がいない自宅へと
   落胆をなおも強めて
      とぼとぼ帰って行く。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結8』69ページ)

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