アダム・スミス 道徳感情論 1.1.45 徳にしても知性にしても並じゃ驚嘆できない

洗練された振る舞いと優れた判断力が、賞賛と賛美に値する特質として見なされるとき、感情が繊細であり、理解が正確であるということになる。通常の状態で、そうした感情や判断に出会うわけではない。つまり徳という感覚も、自制心も、普通の状態にあるのではなく、こうした特質が並はずれた状態にあるときにあるのだと理解するべきなのである。慈悲の心からなる好ましい徳が必要とするものは、たしかに繊細な心であり、不作法で教養のない者には及びもつかない心なのである。寛大な心からなる優れた徳にしても、高貴な徳にしてもたしかに要求してくるものとは、普通の自制心をこえたものであり、死ぬべき運命にある最も弱い者が発揮するような普通の自制心ではない。知的なものに関して言えば、ありきたりの程度なら、それは能力とは言えない。同じように徳に関しても、ありきたりの徳であれば、それは真の徳とは言えない。徳とは素晴らしいものであり、並はずれて偉大で美しいものであり、無教養で並のものからは生じない。好ましい徳とは、かなり鋭敏な感覚からなるものであり、その感覚の美しく、思いもよらない繊細さに驚嘆するのである。崇高であり、尊敬すべき徳とは、かなり高い自制心である。その驚くべき力が、人間の特質である、制御できない情熱をこえることに驚嘆するのである。

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