アルフレッド・マーシャル 経済学原理 1.Ⅲ.10

経済学の法則が比較されるべきものは潮の法則であり、単純で正確な引力の法則ではない。人の行動とは多様で不確かなものだから、行動の傾向について一番うまくまとめている文でも、人間の行動科学の中でまとめたものであるから、不正確かつ不完全なものであるにちがいない。これが、人間の行動を論じることに反対する理由なのかもしれない。でも、行動を論じることに反対することは、人生を放棄することでもある。人生とは、人間の振る舞いの積み重ねであり、思考や感情も人生のまわりに生じるものである。性格のなかの根本的衝動にかられて、いつも理解しようとするものがある。高い地位にある者だろうと地位が低い者だろうと、学がある者だろうと学がない者だろうと関係ない。それは人間が行動する過程であり、目的にてらしてその過程を形づくることなのである。目的が自己的なものであろうとなかろうと、高貴なものだろうと卑俗なものだろうと関係ない。人間の行動の傾向について考えるとき、注意を払わないで考えるのか、それとも注意深く考えるのかという選択をせまられる。なすべきことが難しくなればなるほど、高まる必要性というものがある。それは我慢強く探究することへの必要性であり、経験をいかしながら、更に進んだ物理学によって利益をえる必要性であり、また人間の行動傾向について十分に考えて評価をおこない、臨時の法を組み立てることへの必要性である。(1..10)

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