アルフレッド・マーシャル 経済学原理 1.Ⅲ.9

だが、天文学ほど正確ではない科学のことも見てみよう。例えば、潮の満ち引きについて、科学が説明することには、いろいろなことがある。太陽と月の動きのもとで、一日に二回繰り返される潮の満ち引きのしくみ。新月と満月のときには潮の満ち引きが大きくなるということ。下弦の月のときには、潮の満ち引きが小さいということ。セバーン川のように閉ざされた水路に流れていく潮位が高くなるということなどである。このようにして、イギリス諸島のまわりの陸と水の状態について研究してきたおかげで、ロンドンブリッジだろうとグロスターだろうと、何月何日であろうと、潮が一番高くなる時間を前もって計算できるし、それが未来のことであろうと変わりない。ただ、それには「おそらく」という言葉を使わなければならない。天文学において、木星と木星の衛星の食について話すとき、天文学者は「おそらく」という言葉は使わない。それというのも、多くの力が木星と木星の衛星に作用するけれど、前もって予測できるような明確な方法で、一つ一つの力が働くからである。しかし天気について、どうなるのか前もって予測する術を誰も知らない。テムズ川上流における土砂降りのせいで、北海の強い北東の風のせいで、ロンドンブリッジにおける潮の潮汐が、予想とは随分異なるものになるのである。(1.Ⅲ.9)

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