さりはま書房徒然日誌2026年6月8日(月)

丸山健二『千日の瑠璃 終結8』より十月五日「私は荘厳だ」を読む

「薄暗い森の奥で 少年世一を間違いなく感動させた 手で触れられるほどの荘厳」

それは離れ猿の放つ荘厳。

丸山文学にはよく離れ猿や「猿の詩集」が出てくる。

たぶん私が動物園で見るような猿とは違い、丸山先生が脳裏に思い浮かべるのは山の仙人のような、北アルプスの森を彷徨う猿なのだろう。

人間と似ていながら、人間より遥かに神々しい存在をその姿に見つめているのではないだろうか。

それから猿は
   まるで世一に花を持たせるかのようにしてその場を離れ、
   やはり二本足を保持しながら
      軽蔑などではなく
         むしろ尊厳を込めて
            世一の歩き方をそっくりそのまま真似て移動し、


肉弾戦を勝ち抜いた兵士のごとき生気を放ちつつ
   どうにもならぬ運命の荒波をかき分けて
      さらに森の奥へと姿をかき消し、


その余韻として強烈に残った私は
   世一を金縛りにさせた。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結8』141ページ)

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