丸山健二『千日の瑠璃 終結8』より十月十日「私は宇宙だ」を読む
「常にまほろ町の人々の意識の外に在りながら のべつかれらの魂の正中線にある」と作者が語る宇宙。
宇宙の中にありながら、そのことをすっかり忘れている町の人々は、まさに私そのものだ。
対照的に宇宙を感じ取るのは盲目の少女。
そして宇宙に負けないほどのエネルギーを発散するのは、一番弱い存在である筈の世一。
弱い者たちに強さを感じる……のが丸山文学の魅力の一つだと思う。
盲目の少女が露頭に腰を下ろして愛でる天頂の星は
どこまでも黒く、
日月の運行は退屈極まりなくて
満天にちりばめられた天体の動きは脆弱に過ぎ、
暗黒に呑みこまれることなく私を突き抜けられる光は
一条としてなく、
神仏が放つ光ですら
やがては滅してしまう。
だがしかし
少年世一の実に不安定な肉体と
人一倍揺れの激しい心が
衝突して飛び散る火花だけは例外中の例外で、
それは青くて細く
一定のエネルギーを保ってどこまでも直進し、
ブラックホールがもたらす
重力レンズによる歪みの作用などものともせず
ついには私を貫通する。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結8」160ページ)」