さりはま書房徒然日誌2026年7月23日(木)

丸山健二『千日の瑠璃 終結8』より十月十三日「私は衣だ」を読む

「夏場の勢いがとうに失われている草の上に 下着といっしょに乱雑に脱ぎ捨てられた」墨染の衣が語る。

冒頭の「夏場の勢いがとうに失われている」は今後を暗示しているかのよう。

「シクラメンの花をあしらった」「蝉の抜け殻のごとく」で語らずして、着ている主が見えてくる。

「汚濁したまま」「コールタール」「欲望そのもの」から人間の不気味な部分がひたひた伝わってくる。


普段、一生懸命説明しようとしてつまらなくなっている自分を反省。

そして私のかたわらには
   シクラメンの花をあしらったプリント地のワンピースが
      まるで蝉の抜け殻のごとく投げ出されており、

濃い闇と
   大規模な工事現場の夜間照明に挟まれた
      汚濁したままのうたかた湖の面は
         コールタールのように
             あるいは
                 欲望そのもののように
                    黒光りしている。

(丸山健二「千日の瑠璃 終結8」170ページ) 

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