丸山健二『千日の瑠璃 終結8』より十月十一日「私は消沈だ」を読む
家族の手でオオルリが籠から放たれた後、世一にとりつく消沈が語る。
以下引用文。
その消沈を「水底魚」に例えることで、世一の途方もない絶望がひしひしと迫ってくる。
またオオルリがいた鳥籠と風鈴が同じ軒先にあることで、なんとも言えない可愛らしさ、それがいなくなってしまった虚しさが見えてくる気がした。
その胸の深層部では
暗澹たる何かが
水底魚よろしく
腹這いになったまま微動だにしない。
一日じゅう自室に閉じこもったきりの世一は
青い帽子を目深にかぶったまま
風鈴といっしょに軒先に吊るした空っぽの鳥籠を眺めて暮らし、
(丸山健二「千日の瑠璃 終結8」163ページ)