サキ「耐えがたきバシントン」Ⅶ章64回

「ここで失礼するわ」彼女はきっぱり言うと、展覧会の機械部門から離れるときのように、音のする範囲から離れた。彼女の目的地について、マーラがくだした判断は正しかった。フランチェスカは暑い通りをすすみ、バークレー・スクェアのむかいにあるセレナ・ゴーラクリーの家の方向へむかった。ブリッジの試合をみつけることになるということは有り難いことに確実だけれども、興味深く、事態をはっきりさせてくれるような知らせの断片も聞けるかもしれないという可能性をくわえた。個人的に興味をつよくもっていたせいもあり、彼女は特定の話題に関しての啓蒙をうけることを必要としていた。最近のコーマスは、自分の行動やふるまいについて、挑むかのように押し黙っていた。彼の性分が挑発的にできているせいでもあり、お金をめぐる毎日の口論のせいで、他の会話もだんだん息苦しいものになってきていたからでもあった。フランチェスカは、一度か二度喜ばしいことに、彼が公園でエレーヌ・ド・フレイと一緒にいるところを見かけ、時々、あちらこちらの家で彼らがダンスをしているという話を耳にはさんでいた。一方で、その女子相続人の名前がコートニー・ヨールと結びつけられているという証拠も同じように耳にしていた。こうした気をもませる情報が限られており、また相容れないものであるため、現在の状況についての彼女の知識は深まっていかなかった。もし、若者のうちどちらかが優位にたっているのであれば、わざわざ遠回りをしてその話題をふったり、自分の無知をむやみやたらと暴き立てなくても、噂をたっぷり仕入れたセレナの友人は狡猾にほのめかしたり、感想をひけらかしたりすることだろう。そして高い得点を競って穏やかにブリッジのゲームをしていれば、都合のいいことに無口になりがちなことへの言い訳となった。もし質問が探求的な物になりすぎてまごつかせるなら、守備のスペードに避難すればいい。

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