アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」7章71回

その遺書は、ナン・メイにそこにあるすべてのものを贈るという旨のものであったので、彼女の手に遂行がゆだねられることになった。アイザックおじさんは、その前の日、小屋に戻る途中で長々と話をはじめたが、回りくどい言い方で、抜け目なく意図を隠しながら、これ見よがしに何気ない口調で、遺言のことにふれてきた。だが、そうしたところで何も彼のものにならないということは、姪が教えてくれた遺言のあらましからわかっていた。彼女は抗うかのように、明日になるまで遺書をひらこうともしなければ、見せようともしなかった。もちろん遺産を期待する気持ちは彼にもほとんどなかったが、それでも自分はアイザックおじさんなのだ。経験も積んでいるし、法律にも心得があって、一家の知恵袋なのである。それなのに自分が財産を処理することもなければ、それを売ることもなく、管理を任されることもない。さらに財産を分与されないなんて、ごく控えめに言ってみても、少しひどすぎる。そう考えたせいか、骨惜しみをしたい気持ちにかられてしまい、算術を要することがらから手をひくことにした。

 

The will gave Nan May all there might be to take, and left her to execute. Uncle Isaac, on the return to the cottage the day before, had at length broken into speech, and by devious approaches, cunningly disguised and ostentatiously casual, had reached the will. But he got little by his motion, for though his niece told him the will’s purport, she protested that till to-morrow she should do nothing with it, nor did she even offer to produce it. Of course, he had scarcely expected a legacy himself; but still, he was Uncle Isaac, profound in experience, learned in the law, and an oracle in the family. It seemed, to say the least, a little scandalous that he should not have had the handling of this property, the selling, the control, the doling out, with such consideration the exertion might earn, and the accidents of arithmetic detach.

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