丸山健二「千日の瑠璃 終結1」一月五日を読む
ー小さなホオジロの死に寄せる思いー
一月五日は「私はホオジロだ」で始まる。季節外れの大雪に見舞われて逃げ場を失ったホオジロが語る。
以下引用文。窓越しに世一に飼われているオオルリの「自然界にはない堕落の餌をついばみ」「夏場の華やかなさえずり」をばら撒いている姿を見ながら、寒さに死んでゆくホオジロの姿と思いを描いている。
自然界の小さな死の尊厳を見つめる丸山先生らしい視線を感じる文である。同時に凍死しようとも野鳥としての自分らしさを保とうとするホオジロに理想を感じているようにも思えてくる。
自分は野鳥としての職務を忠実に果たしてきたのだと
そうおのれに言い聞かせることで
死を受け容れようと務め、
そして
いよいよその段が訪れそうになったとき
ぬくぬくした生活を送っている青い鳥に
「それでもおれの方がましだぞ」と
窓越しに言ってやったが
まったく通じなかった。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」389ページ)