アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」10章104回

ほどなくして扉のところで物音がした。扉がゆっくり開いて、まず腹から部屋に入ってきたが、それは監督のコッタムのものだった。背は中くらいの男であったが、肥満体のせいで短躯にみえた。すべての動きは緩慢であったが、それでも筋骨たくましく、筋肉質で、活気にあふれていた。彼は扉のところでくるりと向きをかえ、あたかも彼自身が軸であるようにまわって、片方の手で閉めた。もう片方の手で、ひさしのついた海員帽をぶら下げて視線をむけてきたが、それは穏やかで、落ち着いた様子で、もじゃもじゃの灰色の顎髭のうえの目はまずナン・メイをとらえ、それからジョニーを見た。それから自分の雇用主を見つめた。

 

「やあ、コッタム」紳士はいうと、もう一語筆をはしらせてから、ペンを置いた。「この少年の名前はジョン・メイだ。この子の父親のことを覚えているだろう。不運な事故で、きつい旋盤作業の最中に亡くなってしまった、という事故だ」こう言いながら、ナン・メイをちらりと見やった。

 

監督は体のむきをかえ、くるりとこちらを向いた。それというのも、彼の頭はいかつい肩のうえにのっかっていて、首が見えない有様であったからだが、すこし身をかがめた。それからジョニーを調べたが、その様子は新しい小説を読もうとしているようでもあり、革新的な機械を調べようとしているかのようでもあった。「ええ、そうでしたね」彼はゆっくりと声をあげ、控え目に思い出したそぶりをしたが、はっきりとしたことは言わないでいた。

「よし。この子は見習いとしてきたのだが、お前の作業場にいれたい。とくに問題はなかろう?」

「ありませんとも」声の抑揚は考えぬかれたもので、あいかわらず明確なことは言わなかった。

「それなら、この子を連れていって、作業時間係に教えておいてくれ。月曜日から働いてもらうことになるだろうから」

 

Presently there was a sudden thump at the door, which opened slowly and admitted the foremost partit was the abdomen—of Cottam the foreman. He was of middle height, though he seemed short by reason of his corpulence; deliberate in all his movements, yet hard, muscular, and active. He turned, as it were on his own axis, at the edge of the door, shut it with one hand, while he dangled a marine peaked cap in the other; and looked, with serene composure, from over his scrub of grey beard, first at Mrs. May, then at Johnny, and last at his employer.

“Oh, Cottam,” the gentleman said, writing one more word, and letting drop his pen, “this lad’s name is John May. I expect you’ll remember his father. Bad accident, I believe, in the heavy turning shop; died, in fact.” This with a slight glance at Nan May.

The foreman turned—turned his whole person, for his head was set on his vast shoulders with no visible neck between—bent a trifle, and inspected Johnny as he would have inspected some wholly novel and revolutionary piece of machinery. “Y-u-u-us,” he said, with a slowly rising inflection, expressive of cautious toleration, as of one reserving a definite opinion. “Y-u-u-us!”

“Well, he’s to come on as apprentice, and I’d like him to come into your shop. There’ll be no difficulty about that, will there?”

“N-o-o-o!” with the same deliberate inflection, similarly expressive.

“Then you’d better take him down, and tell the timekeeper. He may as well begin on Monday, I suppose.”

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