アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」21章189回

「出ていけと。このおれに。夕食を食べにいけだと。どういうつもりだ、ヘンリー・バトスン。おまえをごみためから、ここに連れてきたのはおれなんだぞ。ごみためから連れてきて、飯を食わせてやったんだぞ!」

「ああ、いっぱい食わしてもらったとも。うんざりされながら。そうじゃないか。ここから出ていけ!」

「ああ、出ていくとも!でも寝床にはいる頃には、撤回の手紙を読んでいるだろうよ。それにささやかながら、私にも財産が…」

「おまえの、ささやかな財産だと」バトスンはわりこんで、長々とあざけった「これっぽっちでも、おまえに財産があるというのか。どこにあるというんだ? どんな財産なんだ? おれがお前のことをどう考えているか教えてやろうか? 老いぼれの乞食野郎だ。それがおまえの本当の姿だ。老いぼれの乞食野郎め」

 アイザックおじさんは怒りにふるえ、顔が紫になった。「乞食野郎だと?」彼はいった。「乞食野郎? それが私にむかっていう言葉か? おまえを飢えから救ってやったのに。乞食野郎とは、お前のことだ。お前も、お前の親戚も、市長も、それがどうしたっていうんだ? 自分の仕事をやればいいじゃないか。お前にはコーヒーミルも研げないと思うが」

 そのとき、店の扉があいて、ナン・メイがふたりのあいだに立っていた。彼女は甲高い声で喚いてゐるのをききつけ、いつもの最初の休息時に様子をみにきたのだ。「おじさん! ヘンリー! どうしたの?」彼女はたずねたが、その顔には警戒するような表情があった。

 

“Git out? Me? Suppers? Why, ‘Enery Butson, I brought you ‘ere out o’ the gutter! Out o’ the gutter, an’ fed ye!”

“Ah—a lot you fed me, and mighty anxious to do it, wasn’t ye? You clear out o’ ‘ere!”

“O I’ll go! an’ I’ll see about countermandin’ a paper or two ‘fore I go to bed, too. An’ my small property—”

“Yer small property!” put in Butson, with slow scorn. “Yer small property! Where is it? What is it?…Want to know my opinion o’ you? You’re a old ‘umbug. That’s what you are. A old ‘umbug.”

Uncle Isaac grew furious and purple. “‘Umbug?” he said. “‘Umbug? Them words to me, as saved ye from starvation? ‘Umbug yerself. You an’ yer connexions, an’ mayors an’ what not! Why, ye dunno yer own trade! I wouldn’t trust ye to grind a cawfy-mill!”

With that the shop-door opened, and Nan stood between them. She had heard high voices, and at the first cessation of custom she came to see. “Uncle! Henry! What is it?” she asked, with alarm in her face.

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