チェスタトン「マンアライヴ」一部二章第42回

アーサー・イングルウッドは旧友のあとにつづいた。あるいは新しい友達なのかもしれなかった。だが彼には、そのどちらなのか、はっきりと分からなかった。その顔は昔の学友のように見える瞬間もあれば、別の瞬間には似ていないように思えた。イングルウッドが生まれついての丁寧さを捨て去り、いきなり「あなたの名前はスミスではありませんか?」と聞いたのだが、意味のない返答しか返ってこなかった。「きわめて正しい。きわめて正しい。よろしい。すばらしい!」 それはイングルウッドにすれば、よく考えてみると、名前を授けられる生まれたばかりの赤ん坊の言葉のように思え、とても名前を授ける成人の男の言葉には思えなかった。

 

Arthur Inglewood followed his old friend—or his new friend, for he did not very clearly know which he was. The face looked very like his old schoolfellow’s at one second and very unlike at another. And when Inglewood broke through his native politeness so far as to say suddenly, “Is your name Smith?” he received only the unenlightening reply, “Quite right; quite right. Very good. Excellent!” Which appeared to Inglewood, on reflection, rather the speech of a new-born babe accepting a name than of a grown-up man admitting one.

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