チェスタトン「マンアライヴ」一部二章第55回

「ぼくが野蛮だというような話を聞いたとしても、そんな噂は否定すればいい」ムーンは、並はずれた冷静さで言った。「ぼくは従順だ。とても従順だ。はいつくばっている獣のなかでも一番従順だ。同じ種類のウィスキーをたくさん飲むけれど、それも毎晩、同じ時刻に飲む。同じ量のウィスキーを飲み過ぎるくらいだ。パブにも同じ軒数だけ行く。藤色の顔をした、忌々しい、同じような女たちにも会う。同じ数の、汚らしい話も聞く。だいたい同じように汚らしい話だ。友達のイングルウッドに確かめればいいが、おまえが見ているのは、文明のせいですっかり従順になった男だ」

 アーサー・イングルウッドは相手を見つめたが、屋根から落ちそうになるものを感じていた。そのアイルランド人の顔はいつも不気味であったけれど、今では魔力にちかいものが宿っていたからだ。

 

“If you have heard that I am wild, you can contradict the rumour,” said Moon, with an extraordinary calm; “I am tame. I am quite tame; I am about the tamest beast that crawls. I drink too much of the same kind of whisky at the same time every night. I even drink about the same amount too much. I go to the same number of public-houses. I meet the same damned women with mauve faces. I hear the same number of dirty stories— generally the same dirty stories. You may assure my friends, Inglewood, that you see before you a person whom civilization has thoroughly tamed.”

Arthur Inglewood was staring with feelings that made him nearly fall off the roof, for indeed the Irishman’s face, always sinister, was now almost demoniacal.

 

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