再訳 サキ「耐えがたきバシントン」№8

彼女は想像をめぐらせ、自ら梁間ひとつほどの橋を小峡谷にかけたのは事実である。その橋とは、学校にかよっている息子のコーマスのことであった―今、彼は南部地方のどこかで教育をうけていた―。さらに、コーマスがもしかしたらエメリーンと結婚するかもしれないという偶発的な可能性から成り立っている橋なのであったが、その場合、彼女は少し金銭面で迷惑をかけて周囲を困らせながらも君臨している自分の姿を目にするだろうし、ブルー・ストリートの家もまだ支配することだろう。ファン・デル・メーレンは、名誉れある場所で、不可欠な午後の光をとらえることだろう。フルミエの像も、ドレスデンの彫刻も、ウースターの年代物の茶器セットも、これまでどおり壁龕に、妨げられることなく留まることだろう。エメリーンは、こじんまりとした日本風の奥の間を自分のものにするだろう。そこはフランチェスカが夕食後のコーヒーを時々飲んだりする場所であり、居間とは離れているので、自分の持ち物を置いたりもしていた。細部にいたるまで橋の構造は注意深く考えぬかれていた。ただ、不幸な状況とは、コーマスがすべてのバランスをとる架け橋であったという点だった。

It is true that in imagination she had built herself a bridge across the chasm, a bridge of a single span.  The bridge in question was her schoolboy son Comus, now being educated somewhere in the southern counties, or rather one should say the bridge consisted of the possibility of his eventual marriage with Emmeline, in which case Francesca saw herself still reigning, a trifle squeezed and incommoded perhaps, but still reigning in the house in Blue Street.  The Van der Meulen would still catch its requisite afternoon light in its place of honour, the Fremiet and the Dresden and Old Worcester would continue undisturbed in their accustomed niches.  Emmeline could have the Japanese snuggery, where Francesca sometimes drank her after-dinner coffee, as a separate drawing-room, where she could put her own things.  The details of the bridge structure had all been carefully thought out.  Only—it was an unfortunate circumstance that Comus should have been the span on which everything balanced.


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