丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より十一月二十六日「私は報復だ」を読む
十一月二十六日は「私は報復だ」で始まる。三人組の男達が大男を殺して森に埋める……そんな「報復」が語る。
以下引用文。
死体を埋めながら蹴りつける……場の近くを通り過ぎる世一の静けさはなぜなのだろうとも思う。
「死者の骨が折れる音」というおぞましさを打ち消す「青尽くめの少年」という言葉の清々しさ。
「徘徊の名人」というこの世のものではない感じ。
「危ない風土を照らす皓月の真下」という聖と俗をイメージさせる言葉。
そうしたものから世一の不思議な存在が喚起されるのかもしれない。
死者の骨が折れる音を聞いたのは
当事者たちのほかには
おそらく私などとは生涯に亘って無縁であろう
青尽くめの少年で、
足音はほとんど立てず
闇に紛れて徘徊する名人としての彼は
暴力の世界を面白がって生きる
非道な連中に気づかれることなく
危ない風土を照らす皓月の真下を
密やかによぎって行った。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』89ページ)