さりはま書房徒然日誌2024年12月25日(水)

丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より十一月三十日「私は視力だ」を読む

十一月三十日が「私は視力だ」と始まる。
以下引用文を読んでいると、「見えないものを見 見なくていいものを見てしまう」世一が神秘的にも思えてくる。
また「憂わしい表情の顔を丘の上の家の窓から突き出すとき」という文に、思い描いていた世一とは違う、どこか絵画の中にいる少年に思えてくる……のは「憂わしい」という言葉のせいか、それとも「窓から突き出す」という動作のせいなのだろうか……?

私は視力だ、

見えないものを見
   見なくていいものを見てしまう
      ただ生きるだけでも大儀な
         少年世一に具わった視力だ。

そんな彼が
   憂わしい表情の顔を丘の上の家の窓から突き出すとき
      私はしばしば
         遥か彼方をたどたどしい足取りで独り行く
            もう一人の自分の憐れ深い姿を捉え、


(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』102ページ)

さりはま の紹介

更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: さりはま書房徒然日誌 タグ: , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.