さりはま書房徒然日誌2024年12月22日(日)

丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より十一月二十四日「私は荒れ地だ」を読む

十一月二十四日は「私は荒れ地だ」で始まる。
『雑草一本とてまともに育てられるかどうかもわからぬ」と自ら語る荒れ地が、それでも耕すことを諦めない老いた農夫や世一を見つめる。


以下引用文。
諦めずに時間をかけてせっせと面倒を見てくれる老農夫。一方、荒地は農夫の献身を疎ましく思い、「彼の死を心の底から願っている自分」に気がつく。こんな身勝手さも、荒れ地だからあまり嫌悪感なく読めてしまう。もし人間なら……そこでストップしてしまうかも。


「死ぬことを知らぬ」も、「生きることしか知らぬ」も、どちらも同じことなのかもしれないが、両者の足音は違った響きで聞こえてくる。
顔つきとか服装とかではなく、足音に、農夫や世一の存在が滲む不思議さを思う。

ほどなく
   死ぬことを知らぬかのような頑健な農夫の足音が遠のき、

代わりに
   ともあれ生きることしか知らぬ少年の
      か細いと言えばか細い
         溌剌としていると思えばそうも聞こえる
            摩訶不思議な足音がこっちへ迫ってくる。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』81ページ)

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