丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より十一月二十三日「私は気体だ」を読む
十一月二十三日は「私は気体だ」と、湖で坐禅を組んでいる修行僧と湖の底に沈む観音像の「難解にして執拗なやり取りを運ぶ なんとも頼りない気体」が語る。
以下引用文。修行僧と観音像の間野やり取りを運ぶ気体という目に見える筈のないものが、一瞬心に浮かんでくる一文のような気がする。
心に浮かんでくる……というよりも、「破滅の色の鱗」とか書かれると思わずどんな色なんだろう……その小魚をかき分けるとはどんな気体なんだろう……と考えてみたくなる。
わかるように書かれるよりも、思わず立ちどまって考えたくなる不思議さの残る文の方が、イメージしたくなる気が。
そして
破滅の色の鱗に覆われた小魚の群れをかき分けながら沈んでゆき、
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』75ページ)