丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より十二月十四日「私は岩だ」を読む
十二月十四日は「私は岩だ」と、「少年世一の期待を背負って 突風が吹きつけるたびに 丘の上の崖側の縁ぎりぎりのところで微かに揺れ動く」岩が語る。
何とか岩を飛ばしたい世一は、自分の飼い鳥の絵を岩に描きつける……たぶんそんな場面を丸山先生は実際に目にしたのでは……と思わせるひたむきさがある。
以下引用文。転がりはじめたのは、世一が転がそうとした岩ではなく「私の亜流にもなれぬ ありふれた岩」
その岩が転がって、なぎ倒していく存在。その幾つかは、丸山先生の心の奥にある嫌悪の対象なのでは……という気もした。
作家とは、意外な場面で自分の嫌悪の念を文にそっと滑り込ませるのだなあと思う。
いきり立ったそれはなおも勢いを増して
治山工事に携わる四輪駆動車をぺしゃんこにし
炭焼き釜を完全に破壊し
禅寺の山門を滅茶苦茶にして
ようやく動きを止めた。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』161ページ)