丸山健二『言の葉便り 花便り 北アルプスの山麓から』より「死ぬまで振り返らないぞ」を読む
「近頃の天候の高圧的な態度」に押され気味だという丸山先生の心境やら、庭の植物たちについて「我が庭の植物たちがこぼす無言の愚痴には、環境に支配されるしかないのだいう、半ば諦め気分やら運命の必然性やらも感じられてしまう」と語る言葉。
そうした言葉の使い方には大きな気候の変化を前にしての心配と同時に、どこか不安を打ち消そうとするユーモアも感じられる。
以下引用文。丸山先生の庭に佇めば、植物たちの霊が見えてくるような、どこか遠い世界を覗くような気がしてくる。
今は亡きチョコレートコスモスの亡霊が呟きました。
「そんな後悔の言葉なんぞおくびにも出さないでくれませんか」
今を盛りと咲き誇っているクルマユリの生き霊がうそぶきました。
「命を失っていない者はけっして後ろを振り返っては行けません」
(丸山健二『言の葉便り 花便り 北アルプスの山麓から』67ページ)