さりはま書房徒然日誌2025年4月1日(火)

丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より二月十四日「私は民謡だ」を読む

老いた芸者が久しぶりに歌うまほろ町の民謡。もう半ば忘れてしまった歌詞を、自身の体験と混ぜながら歌う。

「娘は今」「彼女は今」で繰り返しながらの語りは、音楽のようでもあり、芸者の若い頃のようでもあり、あるいは民謡の中の娘のようでもあり……繰り返しが哀切を生んでいるように思った。

音楽が好きな丸山先生らしい書き方だと思う。どんな曲をイメージされて書いたのだろうか。

私の全体を構成する
   しとやかな挙措の麗しい娘と
      彼女が辿る数奇な運命を、

濃厚な闇や
   夜の向こうに横たわって滔々と流れるあやまち川へ
      そっと流した


(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』7ページ)

そして娘は今
   山野に早春の気が漲る朝まだき
      静かに実家を離れ、

それから数年後に
   霊魂のみの里帰りを果たした。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』9ページ)

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