さりはま書房徒然日誌2025年6月18日(水)

丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より四月十七日「私は雑念だ」を読む

うたかた湖のボートに乗る若い修行僧の「雑念」が語る。
修行僧の耳に届く世一の口笛。「青々としたさえずり」という言葉に、山上湖の風景が浮かんでくる。
「あっちへ行け」という修行僧の言葉が、木魂となって帰ってくる様子を「僧侶自身の肩をぴしゃりと叩くことになる」とどこかユーモラスな文で終わりにしている結末も心に残る。

口笛による青々としたさえずりを送りこみながら
   さかんに私を嗾け、

   すると
      僧侶の苛立ちがとうとう限界に達して
         「あっちへ行け!」と怒鳴ってしまう。

その罵声は
   残念ながら相手の耳にはまったく届かず、

空しく周囲の山々に撥ね返ったあと
   最終的には
      僧侶自身の肩をぴしゃりと叩くことになる。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』257頁) 

さりはま について

更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: さりはま書房徒然日誌 タグ: , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.