丸山健二『千日の瑠璃 終結8』より九月十一日(火)「私は夜だ」を読む
まほろ町「全体をすっぽりと覆い尽くす 寂寥たる夜」が語る。
以下引用文。夜は丸山先生の見つめるこの世の厳しい姿にも思え、そして少年世一は理想とする人間の在り方なのだなあと思う。
それから私は
卑金属と貴金属のいかんともしがたい隔たりを
闇の力をもって一挙に縮め、
夏の風と秋の葉の境目を
ふとした拍子に鮮明にし、
なお生きつづける水と
あとはもう死ぬしかない水とを明確に分ける。
されど
光と闇を隔てなく縫って進み
意識することなく愛の断片をばら撒き
この世に対して繊細な観察を加え
どこまでもおのれの取り決めに従って生き
滅多に涙を見せぬ
まさに無頼そのものの少年世一に対しては
どうこう言えた義理ではない。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結8』45ページ』