さりはま書房徒然日誌2026年1月24日(土)

丸山健二『千日の瑠璃 終結8』より「私は雨食だ」を読む

「まほろ町の谷という谷をさらに深く掘り下げ のみならず 開発の待ちぼうけを食わせている住民の心まで抉る 容赦のない雨食」が語る。

「雨食」とは聞き慣れない言葉だが、雨による土地の侵食とのこと。

「雨食」に人の心の有り様を思う作者の言葉、「雨食」を心に抱える老若男女、具体的な一人一人の姿……が印象的。

長い分だけ浅い眠りから目覚めた人々は
   夜風にかき乱された胸のうちを
      いつも通りに修復するまで大分手間取り、

どうにかそれが済むと
   今度は私によって穿たれた穴の大きさと深さに気づき、

(丸山健二『千日の瑠璃 終結8』18ページ)

床の間に生花を活けていた宿の女将は
   私のせいで胸を抑えながら
      「ああ」と小さく叫び、

春を知る年頃を迎えた
   向こう意気の強い小娘は
      私のせいで鼻歌を中断する。

(丸山健二『千日の瑠璃 終結8』20ページ)

先日、オンラインサロンで丸山先生は

「歳をとるにつれて心の風穴が増えてくる。趣味、勉強、あるいは犯罪で風穴を一時的に忘れることは出来ても、消し去ることは出来ない」

そんな話をされていた。

雨食とは心の風穴そのものなのかもしれない。

さりはま について

更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: さりはま書房徒然日誌 タグ: , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.