しかしながら、侮辱に憤る情熱は人間性に必要なものとして考えられている。軽蔑をされる人とは、侮辱をうけても座っているだけの人であり、侮辱をはねかえすこともしなければ、復讐することもない人である。そうした人の関心を示さない様子も、何も感じない様子も理解することはできない。そうしたふるまいを見て、人々は懐がせまいと言い、敵の横柄さに腹をたてるのと同じくらいに立腹する。無礼な言葉を投げつけられても、冷たい扱いを受けても、辛抱強く耐えている人を見れば、どんな下層の民でも立腹するものである。こうした横柄さに憤りの声があがり、横柄さに苦しむ人が憤る様を見ようと望む。苦しんでいる人にむかって怒りとともに呼びかけるのは、その人を守るためでもあり、復讐してもらうためでもある。やがて、苦しんでいる人の憤りが冷めたら、人々は心から賞賛して、その人に共感するだろう。受難者への共感のせいで、敵にたいする人々の怒りが勢いづく。そして今度はかわって、受難者が攻撃する様を見て嬉しくなり、過度なものでなければ、受難者からの復讐を心から歓迎する。それはまるで、自分にたいして侮辱がされたかのようである。(1.Ⅱ.23)
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