「コートニー・ヨールに裕福な妻を見つけようとしているのよ」サン・ミッシェルの問いに答えて、セレナはいった。
「残念ながら少し遅かったようだ」大切なことを暴露しようか決めかねている状態に顔を輝かしながら、彼は指摘した。「残念ながら少し遅かったようだ」繰り返しては、その言葉の効果を確かめる彼の様子は、注意深く栽培しているアスパラガスの苗床の成長を見守る園丁のようだった。「その若い者は、あなた達よりもはやく、裕福な妻を自分で見つけたようだ」
彼は話すときに声を低くしたが、それは自分の話に神秘的な感じを効果的にあたえるためではなく、話が聞こえるところにいる他のテーブルの人々が、暴露話を再び暴露されるという特権を失わないようにと望んでのことである。
「それは・・・」セレナが切りだした。
「ミス・ド・フレイだよ」サン・ミッシェルが急いで口をだす様は、自分がしようとしている暴露話が他のひとの当て推量で妨害されないようにしているかのようであった。「本当に理想的な選択だ。政治の世界で名声をなそうとしている男にはうってつけの妻だ。一年に二十四万ポンド、いやもっとたくさんの収入がある。街から遠くないところに素晴らしい所領がある。政治家の家の女主人にはうってつけの娘だ。才女というわけではないけど頭はある。わかるだろう?正しい選択だよ。もちろん今の段階で、はっきりと宣言するのは早すぎるだろうがーーー」
「どんな札をきろうとしているのか宣言しても、私の相方には早すぎるということはないと思うけど」レディ・キャロラインが悪意のある声でさえぎったので、サン・ミッシェルは大急ぎで自分のテーブルに逃げた。
「おや、私の番だったかしら。ごめんなさい。やりかけだったわね」
「いいえ。トランプのことではないわ」レディ・キャロラインはいった。その手は成功し、ラバーはついに彼女の手におち、しかもオナーカードで心地よい差をつけた。同じ組み合わせで、ふたたびカードをきったが、今度はカードの運はフランチェスカとアーダ・スペルベクシーにくみせず、ラバーの終わりには、どっさり山積みされた点数が二人をまっていた。フランチェスカもわかっていたが、ややむらのある試合運びをしたことが少なからず、このような結果となったのだ。サン・ミッシェルの会話への侵入が、いつもなら強い筈のブリッジの腕前がやや注意散漫になったことは明らかだった。