「ずいぶん想像に任せて描いているわね」レディ・キャロラインの舌鋒の範囲から遠ざかっていたアーダ・スペルベクシーがいった。
「でも、とにかく誰を描いているのかわかるもの」セレナ・ゴーラクリィはいった。
「フランチェスカをよく描いた絵だこと」アーダも認めた。「もちろん彼女も喜んでいるでしょうね」
「それが肖像画の目につく欠点でもあるけど」セレナはいった。「結局、後世のひとが何世紀ものあいだ、その肖像画をみつめるというなら、実物の最高の姿を描くよりも、ましに見える姿を描く方が親切だし、理にかなうことになるから」
「でも、この画家の描き方はひどく不適切よ」アーダはつづけたが、まるで画家にたいして立腹しているかのようであった。「彼の描く大半の絵には、魂が欠落しているわ。ウィニィフレッドときたら人がいいから、私の収集品が年配の女性のためのものでも、上手に感情をこめて語るけど、ここに描かれている彼女は、ごく普通の乳搾りをしている金髪娘よ。でもフランチェスカときたら、これまで会ってきた女性のなかでも知性が一番欠けた女よ。彼が彼女にそえたのはーーー」
「しっ」セレナはいった。「バシントン家の息子があなたのうしろにいるわよ」