「彼女にしてみたら、彼は夫という概念には当てはまらないけど、シュゼットには十分だとおっしゃりたいのね」彼女は自分にむかっていうと、見えないように鼻孔をうごかして鼻をならした。それから微笑みをうかべながらも、かなり恩着せがましい態度で、彼女は相手に損害をあたえる反撃にでた。
「ところで、あなたの婚約の話はいつ聞けるのかしら?」
「今、きけるわ」エレーヌは静かにいったが、それは電撃的な効果をともなっていた。「その知らせを伝えようと思って来たのだけど、まずはシュゼットの話から聞こうと思ったの。それに二、三日のうちに、新聞で正式に発表されるだろうから」
「それにしてもお相手はどなた? 今朝、パークでいっしょにいた方かしら?」シュゼットは訊いた。
「あら、今朝、パークでどなたかたとご一緒していたかしら? 浅黒い肌のハンサムな方のことかしら? ちがうわ、コーマス・バシントンじゃないわ。いずれにしても名前だけは知っているけど。たぶん新聞で写真を見たことがあると思うわ」
「飛行機の操縦士かしら」ブランクレー夫人がたずねた。
「コートニー・ヨールよ」エレーヌはいった。